企業は日々、多くの課題に向き合っている。
売上を伸ばしたい。
ユーザーを増やしたい。
離職率を下げたい。
業務を効率化したい。
そして多くの場合、私たちはすぐに解決策を探し始める。
新しいシステムを導入する。
新しい施策を実施する。
新しい機能を追加する。
しかし、本当に重要なのはその前かもしれない。
「そもそも何が問題なのか」
という問いである。

デザイン思考という言葉が広まって久しい。
しかし、その本質はアイデア創出ではない。
本質は「問いを立てること」にある。
どれだけ優れた解決策であっても、問いが間違っていれば意味を持たない。
逆に、良い問いは新しい市場や新しい体験を生み出す。
優れた企業ほど、この課題設定に多くの時間を使っている。
Airbnbはイノベーションの代表例として語られることが多い。
しかし、彼らが向き合ったのは「宿泊施設が足りない」という問題ではなかった。
当時すでにホテルは数多く存在していた。
彼らが見つけた問いは別のところにあった。
「知らない人の家に泊まることへの不安を、どうすれば解消できるだろうか。」
この問いから、
レビュー機能
本人確認
ホストプロフィール
といった仕組みが生まれた。
Airbnbが設計したのは宿泊施設ではない。
「信頼」である。
2000年代のゲーム業界は、高性能化競争の時代だった。
グラフィック性能。
処理速度。
スペック競争。
多くの企業が性能向上に向かう中、任天堂は異なる問いを立てた。
「ゲームをしない人は、なぜゲームをしないのだろう。」
その結果として生まれたのがWiiである。
リモコンを振る。
家族で遊ぶ。
高齢者でも楽しめる。
任天堂はゲーム機を作ったのではない。
ゲームとの距離を再設計したのである。
Dysonの創業者ジェームズ・ダイソンは、掃除機の性能向上から出発したわけではない。
彼が注目したのは、使い続けると吸引力が落ちるという不満だった。
なぜ吸引力は落ちるのか。
紙パックは本当に必要なのか。
その問いを掘り下げた結果、生まれたのがサイクロン式掃除機である。
イノベーションは突然生まれるものではない。
小さな違和感への問いから始まる。
多くの企業は問題解決に力を注ぐ。
しかし、AIやDXによって解決策があふれる時代だからこそ、差がつくのは課題設定である。
どんな問題を解くのか。
なぜそれが問題なのか。
本当の課題はどこにあるのか。
その問いが事業の方向性を決める。
そして、その問いを見つけるために必要なのが観察である。
ユーザーを見る。
現場を見る。
違和感を見る。
優れたデザイナーは答えを急がない。
まず問いを探す。
かつてデザイナーは「形にする人」と考えられていた。
もちろん、それも重要な役割である。
しかし現在はそれだけではない。
サービスデザイナー。
UXリサーチャー。
デザインストラテジスト。
業務デザイナー。
彼らに共通しているのは、問いを発見する力である。
何を作るかではない。
何を問い直すかである。
その力が、企業の競争力になり始めている。
前回の記事では、デザインとは「意図を形にすること」であると述べた。
では、その意図はどこから生まれるのか。
その起点は「問い」にあると考えている。
良い問いは、新しい体験を生む。
良い問いは、新しいサービスを生む。
良い問いは、新しい組織を生む。
そして、良いデザインはいつもそこから始まる。
未来を変えるのは、正しい答えではない。
問いを持つことなのかもしれない。
次は、実践のステージへ。