なぜ大学は「デザイン」を取り入れているのか ──新規事業・イノベーション教育から考える価値創造 

はじめに

近年、一橋大学や東京大学をはじめ、国内外の大学で、デザインを取り入れた教育プログラムが広がっている。

「デザイン」と聞くと、ロゴやUI、Webサイトなど、見た目を設計する仕事を思い浮かべる人も多いだろう。

しかし、大学で取り組まれているデザインは、それだけを意味しているわけではない。

新規事業の創出やイノベーション、社会課題の解決などをテーマに、「どのような価値を生み出すのか」を考えるためのアプローチとして、デザインが活用されているのである。

なぜ今、大学はデザインを取り入れているのだろうか。


新規事業には「正解」が存在しない

新規事業では、市場分析や競合分析、事業戦略の立案など、さまざまなフレームワークが用いられる。

ビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションキャンバスは、その代表例である。

これらは、「誰に」「何を」「どのように届けるのか」を整理するための優れた手法であり、多くの企業で活用されている。

しかし、新規事業には一つの難しさがある。

それは、正解が存在しないことである。

市場を分析し、仮説を立て、収益モデルを描くことはできる。

しかし、その価値を最終的に判断するのは、ユーザーである。

だからこそ、新規事業では「何をつくるか」だけではなく、

「人は、なぜ価値を感じるのか。」

という問いが欠かせない。


大学でもデザインを取り入れる理由

こうした背景から、大学でもデザインを取り入れた教育が進んでいる。

例えば、一橋大学では、社会科学とデータサイエンスを融合し、複雑な社会課題やビジネス課題に向き合う教育が展開されている。

また、東京大学でも、学部や研究科の枠を越え、価値創造やイノベーションをテーマとした教育プログラムが実践されている。

もちろん、大学ごとに教育内容は異なる。

しかし共通しているのは、「知識を学ぶこと」だけではなく、「価値を創る力」を育てようとしている点である。

ここでいうデザインとは、単に形をつくる技術ではない。

人を理解し、課題を見つけ、価値を考え、それを社会へ届けるまでのプロセスそのものを指している。

だからこそ、経営やテクノロジーと並び、デザインが重要な役割を担っているのである。


ビジネスモデルだけでは、人は動かない

ビジネスモデルは、事業を成立させるための設計図である。

しかし、人がサービスを選ぶ理由は、それだけではない。

使いやすさ。

共感。

安心感。

ブランドへの信頼。

こうした体験の積み重ねが、「価値」として認識される。

だからこそ、新規事業では次の流れが重要になる。

ビジネスモデル

価値提案

ユーザー体験

価値

事業として成立することと、人に価値を感じてもらうこと。

その両方がそろって初めて、新しい価値は社会に受け入れられるのである。


私自身が感じてきたこと

私はこれまで、コンサルタントとして新規事業やDXに携わってきた。

市場を分析し、戦略を考え、ビジネスモデルを設計する。

そのような議論を数多く経験してきた。

一方で、

「ユーザーは、なぜそれを選ぶのか。」

「どのような体験が、人の心を動かすのか。」

という問いは、後半になって議論される場面も少なくなかった。

もちろん、近年では最初からユーザー体験を重視する企業も増えている。

だからこそ、大学でデザインを取り入れた教育が広がっていることに、大きな可能性を感じている。

市場、技術、経営だけではなく、人を中心に価値を考える人材が増えることで、日本の新規事業やイノベーションはさらに面白くなっていくはずである。


おわりに

デザインとは、見た目を整えることだけではない。

人を理解し、課題を見つけ、新しい価値を生み出し、それを社会へ届けるための営みである。

だからこそ今、大学でも企業でも、デザインを取り入れる動きが広がっているのだろう。

私は、大学で学ぶ学生も、企業で新規事業に挑戦する人も、立場は違っていても同じ方向を向いていると感じている。

「まだ世の中にない価値を生み出したい。」

その想いを持って挑戦する人たちが、これからさらに活躍できる社会になってほしい。

そして、その挑戦を、私はこれからも応援していきたいと考えている。


FeatU編集部では、これからもデザインとビジネスをつなぐ視点から、新規事業開発、サービスデザイン、ブランディングについて発信していきます。

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