かつて、デザインは最後の工程だった。
戦略を考える人がいて、
システムを作る人がいて、
そのあとにデザイナーがいた。
つまりデザインは「整える仕事」だった。
しかし今、その構造が大きく変わり始めている。
世界の大手コンサルティングファームは次々とデザイン会社を買収し、クリエイティブ組織を拡大している。
なぜか。
それは、企業の競争力が「機能」ではなく「体験」で決まる時代になったからである。
アクセンチュアは2022年、クリエイティブ部門を統合し「Accenture Song」を立ち上げた。
世界中のデザインファームや広告会社を傘下に持ち、顧客体験(CX)を起点とした変革支援を行っている。
一見すると不思議に見える。
なぜ戦略コンサルティング会社がデザインに投資するのか。
しかし背景にはシンプルな理由がある。
企業が解決しなければならない課題そのものが変化したのである。
かつて企業は、
より安く、
より速く、
より高性能に、
を競っていた。
しかし現在、多くの市場では機能差が小さくなっている。
スマートフォンも、
銀行アプリも、
ECサイトも、
基本機能だけで大きな差を作ることは難しい。
そこで重要になるのが体験である。
使いやすいか。
心地よいか。
共感できるか。
ブランドとして信頼できるか。
企業が競争する場所が「機能」から「体験」へ移ったのである。
ここでいうデザインは、
色やレイアウトの話ではない。
もっと広い意味での設計である。
顧客体験
サービス体験
ブランド体験
社員体験
これらすべてを設計すること。
つまり、
デザイン=意思決定の設計
なのである。
だから現在のデザイナーには、
「何を作るか」
よりも、
「なぜそれを作るのか」
が求められている。

アクセンチュアは2013年にデザインファームFjordを買収した。
これは単なる組織拡大ではなかった。
戦略とデザインを分離しないという意思表示だった。
課題を見つける人と、
解決策を形にする人を、
別々にしない。
ユーザー理解から実装までを一気通貫で設計する。
そんな考え方が生まれていく。
ここで誤解されやすいことがある。
企業はデザインが欲しいのではない。
デザイナーが欲しいのである。
なぜなら、
デザイナーは形を作る人ではなく、
問いを発見する人だからだ。
ユーザーの違和感を見つける。
言語化されていない課題を見つける。
複雑な情報を整理する。
意思決定を支援する。
こうした能力が、経営の現場で求められている。
アクセンチュア・ソングの成長は、ひとつの事実を示している。
デザインは、もはや最後に加える装飾ではない。
経営そのものになりつつある。
企業は機能を売っているのではない。
体験を売っている。
そして体験は、設計される。
だから今、デザインは経営の中心へ移動しているのである。
次は、実践のステージへ。